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メンタルヘルスケアをポジティブに進めよう

潟vラネット・コンサルティング 代表取締役 根岸勢津子

■メンタルヘルスケアは経営戦略である

 メンタルヘルスケアというと,事故が起きた場合の保険のようにも考えられるが,それでは経営層を巻き込んだ対策は無理である。なぜなら,経営者はネガティブな話が好きではない。「働く仲間が永続的に生産性を向上させ,万が一,心身の不調をきたした際にも,決められた手順に従って安心して回復に向かえるような仕組みを整えましょう」というポジティブな視点に立ちたい。さらには,「稼げる組織になるための施策」として位置づけてもよい。そして,それを実現するためには,不調者一人ひとりに振り回されるのをやめ,ポピュレーション・アプローチ(多数の健康な人たちを不調者にしないための施策)に取り組むよう頭を切り替える必要がある。

■まずは全体像の把握から


 メンタルヘルスケアの全体像を理解するための概念図を上に示した。これは,企業が到達すべき場所を示した地図の役割を果たす。そして,地図が手に入ったら,歩き方を考えよう。
@マトリクスで施策を整理
 ここで便利なのが,マトリクスである。「セルフケア」「ラインケア」「人事部門」「医療スタッフ」「外部機関」それぞれで担当することを,「1次予防」「2次予防」「3次予防」の段階別に整理するのだ。その際,ブレインストーミングの手法で,思いつく施策をどんどん出してから,自社の事情に応じて優先順位を決めればよい。
A推進機関を作り信頼を高める
 メンタルヘルスケアの推進にあたっては「人事部門のだれか」としておくのではなく,「健康推進管理室」などの機関を作り,そこで健康診断から産業医とのやりとり,休職者や復職者のケアなどの業務を扱うようにすると信頼性が増す。会社側の姿勢が前面に現れ,従業員に好感を持って受け入れられること間違いなしである。
B管理職研修のコンテンツを工夫する
 メンタルヘルスケアにおいて,最も重要な施策のひとつが管理職研修だ。研修において最も身につくのは,ふだんの組織運営にメンタルヘルスケアを活かすやり方や,不調者発見時の行動ルールなど,“know how”ではなく“do how”である。予め自社の管理職マニュアルを作成し,それをテキストに研修を行うことができれば,その後,何かあれば取り出して確認することもでき,非常に実効性が高い。
C初年度は広く浅く,そしてPDCAで次年度へ
 管理職研修の次は,予算に応じてストレスチェックや相談窓口を検討したい。そして労務コンプライアンスに則った産業医の配備と健康診断。初年度はここまでで十分である。大切なのは,施策の評価と見直しである。そして必ず年間計画を立てること。余力があれば,メンタルヘルス不調者に関わる社内ルールの見直しに手をつけ,次年度からは,カウンセラーや保健師の導入など,不調者の早期発見,早期治療への試みを進める。メンタルヘルスケアは単年で終わる施策ではない。永続的な従業員の健康増進,生産性向上を狙って毎年スパイラルアップさせたい。

(月刊 人事マネジメント 2011年5月号 HR Short Message より)

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