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外部研修講師の上手な活用法

(社)日本マネジメント協会 代表理事 内海 透

 「あの講師使えない。誰かいい人紹介して」といったお話を人事・教育担当者の方から聞く機会がある。費用と労力をかけたのに成果が出ない研修では,受講者,企画した人事・教育担当者ともに大きな損失である。筆者はかつて企業の人事部門で外部講師を活用した研修を運営し,現在は自らもコンサルタントとして外部講師を務め,また,企業や経営団体に講師のコーディネートを働きかける立場にいる。その経験も踏まえ,以下に「外部講師を上手に活用して研修成果を高める方法」をご紹介したい。

■課題とゴールを明確にし,研修目的を絞り込む

 従来の研修は外部講師が講義を行い,知識の習得,情報の伝達を目的に実施されていたが,情報化の進展で知識・情報は短時間で普及できるようになり,最近は「知っている」を「できる」にする実習型研修のニーズが増えている。しかし,研修の目的をうかがうと明確に答えられる担当者は意外に少ない。
 「営業部長は『ウチの社員はお客様とのコミュニケーションが下手だ』と言い,製造部長は『5Sを徹底できない』と言い,社長は『新入社員のレベルが低すぎる』と言っています。そこで研修を企画したいのですが,どなたかいい講師の先生はいませんか?」―これでは課題もゴールも明確ではなく,研修の目的は絞れない。今一度,研修の開催目的を社内で確認,共有しておきたい。そのときヒントになるのが,現状とゴールの定量化であり,私たちがおすすめしているのは次のような方法である。
 「本来あるべき姿を100点とすると,現状は60点,研修を実施することで85点にまではなってもらいたい」といった見通しを人事部門,研修対象部門責任者,外部講師の3者間で共有するのである。目的,課題,ゴールが明確であればどのような方法がいいかは自明となる。

■“相性”を確認し,講師を選ぶ

 次にどのようなタイプの講師が自社に合っているのかを明確にする。同じ研修内容でも講師のタイプにより成果が大きく違う場合があるからだ。実際のところ,受講者は「何を教わったか」より「誰に教わったか」を覚えているものである。例えば平均年齢が若く体育会的要素が強い営業系の部門なら元気な兄貴・姉貴的講師との相性が良い。一方,技術・開発部門では論理的な話の得意な講師との相性が良い。講師自身も相性の良い会社と一緒に仕事をしたいと考えており,普段から積極的に外部に情報発信をしている。今は,メルマガ,ブログ,ツイッター,フェイスブックなど様々な発信情報に触れることができ,講師の素顔が分かる時代になっているので,自社・対象部門との相性を確認しておきたい。

■研修後も自主的に「定着化」の取り組みを

 エビングハウスの忘却曲線によれば,研修終了から1ヵ月経過すると記憶内容は20%程度になってしまうという。従って,研修効果を維持するためには定着化の仕組みが必要である。おすすめしたい方法は,事前に課題とゴールを確認する際に,その後の取り組みについても共有しておくことである。
 営業スキル研修を実施したある企業では,その後,朝礼時に簡単なロールプレイ(役割演習)を継続して行っている。この企業では営業部門20人を対象に全日の営業スキル研修を実習形式で実施。その後は朝礼時に4,5名の課単位で実演者1人,顧客役1人,残りが評価者となりロールプレイを続けている。5分間の演習に対して一言意見・感想を述べる簡単な方法だが,成績上位者の営業トークや,顧客対策ノウハウなどの共有が図られ,学習内容の定着化に成功している。外部講師の活用を契機に社内に変化を引き起こした好事例として参考にしたい。

(月刊 人事マネジメント 2012年5月号 HR Short Message より)

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北海学園大学法学部卒業。事務機販売会社、葛゚江兄弟社にて営業職、経営企画管理職。マネジメントデザイン椛纒\取締役を経て、(社)日本マネジメント協会代表理事就任。「答えは現場」をモットーに、人と組織の潜在力を顕在化させる取り組みを展開。商工会議所でのセミナー実績も多数。著書に『いつも目標達成している人の「人の心を動かす」NLP会話術』がある。

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