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組織イノベーションのすすめ

潟Xコラ・コンサルト プロセスデザイナー 三好博幸

■「イノベーション」が至上命題の時代

 日本が世界の中で存在感を維持し,高めていくためには「イノベーション」が至上命題になっている。これからの時代は,ITの飛躍的な進歩がもたらす社会インフラを活用しながら,「いかに人が,人や社会のために考え,深い洞察に基づいて,創造や革新を試みるか」が生き残りの焦点になっていく。まさに「イノベーション」勝負の時代だ。しかし,多くの企業がイノベーティブでありたいと望み,その努力をしているにもかかわらず,なかなか実現できていないのは,どうしてなのだろうか?
 今のように,あらゆる分野での技術進化スピードが速く,複雑系化した社会では,かつてのように一握りの天才がもたらす新しい着想を待ってはいられない。もっと多くの人がより多くのアンテナを持ち,チームでイノベーションを実現できるような組織作りが求められている。組織とは本来,個人が持つ知や力をつないで新しい知や大きな力を生み出したり,一人ひとりの貢献をより大きな社会的貢献につなげていくためのものである。つまり,もともと組織はイノベーションを生み出すためのシステムなのだ。
 ところが実際の企業をみると,この組織というシステムが旧式のままで,イノベーティブな新しい組織作り,すなわち「組織イノベーション」に本気で着手できていないケースがほとんどだ。

■組織イノベーションにもテクノロジーがある

 イノベーションを生み出すといっても,その決定的な手法が確立されているわけではない。だが,「イノベーションとは既存の知識や技術,プロセスの新たな結合である」ということが基本原理としていわれている。従って,イノベーティブな組織を作るカギは,人と人,知恵と知恵,技術と技術,貢献と貢献,仕事と仕事がつながり,結合しやすい環境や機会をチーム,組織の中に築いていくことだ。
 一方で,現実にはコミュニケーション不全,部署間の壁,共有すべき目的がないことなどから,これらの「つながり」が寸断されていて,さらにはそれを再構築するすべを持っていない企業が多いのだ。私たちは,これらのさまざまな「つながり」を築き,イノベーティブな組織を作るテクノロジーを持っている。それが「組織テクノロジー」である。それは次の6つの要素技術からなっている。

■人事部門から組織のイノベーションを仕掛けよ

 一部の先進的な企業では「イノベーションを生むためには,まず組織のイノベーションが必要」との認識を持ち,組織テクノロジーを取り入れて全社的な取り組みを始めている。そのディレクター的な役割を人事部門や経営企画部門が担っている。
 しかし,残念ながら人や組織を扱う部署である人事部門が自らの役割定義自体を進化させ,組織イノベーションを自部門の最重要課題として積極的にディレクター的な機能を果たしている例は,まだ少数である。欧米で流行の新しい制度の導入や,机上の組織図いじりだけでは組織イノベーションを促進することができない。
 人事部門が,組織イノベーションを仕掛ける役割に自ら転換を図ることが,今最も求められている。

(月刊 人事マネジメント 2013年8月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

  
1986年東京大学文学部哲学科卒業。鞄立製作所にて、人事・人材育成・海外事業展開などに従事。在勤時から企業内プロセスデザイナーとして組織風土・体質変革に取り組む。2001年、潟Xコラ・コンサルトに入社。IT関連企業、メーカー、商社、地方自治体など、大手企業・組織を中心に変革をサポート。スコラ・コンサルトが蓄積してきた組織風土・体質変革の経験則や知見を研究し、実践から組織本来の機能を作り込んでいく技術原理を抽出し、整理体系化に取り組む。その成果「組織テクノロジー」をさらに多様な企業のメンバーと研鑽していくため、組織イノベーション研究のコンソーシアムを立ち上げる。著書に『組織(つながり)をつくる技術(テクノロジー)』(スコラ・コンサルト)、『フィールドブック学習する組織「5つの能力」』共同監訳・解説、『フィールドブック学習する組織「10の変革課題」』共同監訳・解説(日本経済新聞社)。

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