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「在宅勤務」の可能性に要注目

NPO法人ウーマン・キャリア・デザイン 理事長 中山 匡

■働く側:仕事と育児の両立がしやすい

 「どうして,こんな大切なときに,うちの子はいつもいつも熱を出すの!?」「もう私には,フルタイム勤務は無理だと思う……」
 有能な女性であるほど,保育園やベビーシッター,両親の力を借りながらも,何とか仕事と育児の両立を実現しようと全力を尽くしているものです。しかし,心が折れる瞬間もあるようです。当社には,そういったことをきっかけに,在宅で働くことを決め,入社してくれたスタッフが10名ほど在籍しています。担当している仕事は,データ入力のような軽作業ではありません。働く場所が在宅であるというだけで,通常であれば出社して行う水準の業務内容ばかりです。子供が小さければ,熱を出して,保育園が預かってくれないこともあります。そんなときでも,子供が寝た後の時間を活用して,集中して一気に仕事に取り組んでくれています。

■会社側:高い水準の即戦力が確保できる

 それらの在宅勤務スタッフのなかには,大手企業出身者も少なからずいます。誰もが知る航空会社,広告代理店,家電メーカー,生命保険会社。そういった企業での役員秘書や重要職を経験したスタッフが,当社で,今,即戦力として活躍してくれています。それらのスタッフは,子供の病気や学校行事で頻繁に会社を休むなどして,大手企業では継続勤務が無理な状態に置かれてしまったのかもしれません。しかし,能力が劣っているわけでは全くなく,単にフルタイムで時間を割くことが難しいというだけなのです。大手で鍛え抜かれた力には素晴らしいものがあり,中小企業で,そのようなスタッフの力を借りられるとしたら,大変ありがたいはずです。今は,競合企業と人材を奪い合う採用の難しい時期です。そんな状況ですが,力がありながらも継続勤務が難しくなって能力を持て余しているスタッフを採用できるとしたらいかがでしょう? フルタイム勤務での採用は現実的ではなくても,在宅勤務であれば採用の可能性は広がり,しかも,即戦力として活躍してもらえるのです。

■在宅勤務に向いている人の適性と見極め方

 気をつけたいのは,そうした有能な人材のなかにも,在宅勤務に向いている人と,そうでない人がいるということです。この適性の見極めが大切です。
 在宅勤務者の適性のうち大きな要素の1つが,「安心提供力」です。在宅勤務で仕事をお願いした場合,出社勤務と異なり,そのスタッフが仕事をしている姿を目で見て確認することができません。その不安を補うためには,上司が1つひとつ状況を確認しなくてもスタッフ自身が(上司の気持ちを理解したうえで),今どんな状況にあり何をしているのか,業務を行った結果どうだったのかについて,自ら報告する必要があります。仕事の力や報告のスキルがあるかどうかは,採用する前に,一度,実技試験として,採用後に担当してもらいたいと考えている業務の一部を任せてみて確認しておくことが有効です。
 在宅勤務者の適性としてもう1つ大切な要素が,「自立力・孤独力」です。在宅勤務は,とても孤独な働き方です。和気あいあいとした楽しい雰囲気が好きだったとしても,仕事に集中しているときにはそれを求めず,孤独な環境にも寂しさを感じ過ぎることなく,自立して仕事を進めていける適性が求められます。こうした適性を満たしていないと,在宅勤務スタッフのメンタル・ケアが必要になり,それがコスト・アップにつながることもあります。自立していることはもちろんですが,孤独な状態でも平気な人を採用できたら,それは鬼に金棒といえるでしょう。

(月刊 人事マネジメント 2016年3月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
東京大学大学院修了後、大手経営コンサルティング会社にて株式公開支援、5つのフランチャイズ本部の立ち上げ、マーケティング・リサーチ等の活動に従事。2003年に独立し、アントレプレナー・コーチング(株)を設立。2009年より、出産・育児・看護等を機にフルタイムでの勤務が難しくなった有能な女性が「在宅勤務」という形で働けるよう支援活動を開始。30社を超える導入実績を経る。2011年4月、NPO法人ウーマン・キャリア・デザインを設立し、理事長に就任。2011年9月に、生徒全員が講師のビジネス・スクールである、一般社団法人シェア・ブレイン・ビジネス・スクールを設立。アントレプレナー・コーチング株式会社が主体となって開始した「在宅秘書サービス」を、一般社団法人シェア・ブレイン・ビジネス・スクールにサービス移管。

>> NPO法人ウーマン・キャリア・デザイン
 http://www.e-secretary.net