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問題を解決する「仕分け」のスキルに注目

(株)コンパス 代表取締役 鈴木進介

■必要なのは“使える問題解決力”だ

 企業の人事担当者と研修テーマについてご相談させていただく際,「この先が見えない複雑な時代において,社員に必要な一番の能力は何でしょう?」とよく尋ねられます。この質問に対して,私は,「一にも二にも問題解決力です」とお答えしています。
 日々の仕事では,顧客からのクレーム,目標の未達成,市場の激変などあらゆる問題が生じます。そこで「ロジックツリー」などを使いながら問題解決力を養成していこうとする研修も多くあります。しかし,これら講座を受講した後に,メソッドを使いこなせているケースはほとんど見かけません。理論は理解できても,仕事の場では“ピンと来ない”からです。そこで,私は「すぐに使える,必ず使える,誰でも使える」をコンセプトに,「仕分け式」による問題解決力の養成を提唱しています。それは,問題を仕分けしながら最小化することで,解決のスピードを速める手法です。問題解決が難しい,時間がかかるという人は,問題を大きく捉え過ぎる傾向があります。何でもない仕事でさえ,“不安だ”“面倒だ”という気持ちが先に立って必要以上に大きく見てしまい,立ち止まってしまうのです。そんな状態では,ロジックツリーの応用など困難でしょう。

■「仕分け」で本質を見極め優先順位をつける

 問題を複雑に捉えなくても,直面していることを仕分けし,細分化していけば,何が原因で,何が解決策になるのか,そして第一歩目は何かは,スピーディーに特定できます。
 例えば仕事の「段取り力」で考えてみましょう。todoリストの中で「10割の完成度が求められるもの」と「6割の完成度でよいもの」,「自分でやるもの」と「他人に任せるもの」と仕分けすれば,自分が集中すべき対象は何かが自ずと見えてきます。
 「時間管理力」で考えてみれば,「効率を上げるもの」と「時間をかけて取り組むもの」,「今やるべきもの」と「明日以降でも問題ないもの」と仕分けすれば,生産性の向上も可能になります。
 「プレゼン力」であれば,「話の中心軸」と「枝葉にあたる部分」,「必ず伝えるべき項目」と「必ずしも伝えなくてもよい項目」を仕分けすれば,簡潔にかつ具体的に伝える力が身につきます。
 では,リーダーの方が戦略を検討する際にはどうでしょうか? 「実現性が低いけど効果が高いもの」と「実現性は高いけど効果が低いもの」などの軸を設けて仕分けし,優先順位をつければ,戦略のフォーカスが明確になります。
 このように,問題のジャンル別に基準を設けて細分化していけば,問題の本質が見えやすくなり,はじめの第一歩が踏み出しやすくなります。いくら問題を緻密に分析できても,はじめの第一歩が具体化しなければ,解決は困難ですが,仕分けができれば原因分析から解決策の検討,はじめの第一歩目まで一気通貫で問題解決が可能になります。

■「仕分け」のスキルは企業の成長も支える

 先が見えない複雑な時代を迎えています。今,求められることは,いかに思考をシンプルにするかという視点です。“あれも,これも”という足し算から,“あれか,これか”という引き算に思考を変換しなければ,複雑な問題は解決できないのです。一足飛びに解決策を絞り込むのは困難ですが,「本当に重要なこと」と「重要ではないこと」を仕分けしていけば,自ずと問題解決力は養われていきます。さらに,「仕分け式」は問題解決力にとどまらず,コミュニケーション力・生産性向上・経営戦略など広範囲に応用力を発揮します。仕分けのスキルが,企業の成長を支える基盤になっていくのです。

(月刊 人事マネジメント 2016年9月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
大学卒業後、富士通グループにてコンピュータの営業、商社で半導体の法人営業職を経て、2000年に(有)エフティーシーを設立。代表取締役に就任し、パソコン教室の経営、インストラクターの派遣事業を中心に事業展開。パソコン教室事業では半年以内に生徒数が100名を突破し、地域一番店に。同時に起業家交流会を組織化し、数多くの新規事業の支援に携わる。2001年にコンピュータ関連事業を売却し、業容を経営コンサルティング業に業態転換。2005年に増資、組織・商号変更を行い、(株)コンパスを設立、代表取締役に就任。専門は新規事業およびマーケティングでベンチャー企業から東証一部上場企業まで数多くの企業のアドバイザーとしてプロジェクトを支援。コンサルティング実績は100社以上にのぼる。また研修講師としては“社外先輩”という立場で若手社員から支持を得て、起業家型人材や次世代リーダーの育成を得意とする。

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