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若手を離職させない指導法とは?

(株)ジェイック 取締役教育事業本部長 東宮美樹

 20代の早期退職を防ぎたいと考える企業は増えています。それと並行して,「最近の新入社員が何を考えているのか分からない」「若手の離職を防ぎたいが,どう関わればいいだろうか?」といった人事担当者のお声も増えています。では若手を離職させないための指導法は,具体的にどう考えればよいでしょうか? 弊社では毎年4月に新入社員研修を実施しており,その際,新人たちからアンケートの回答を得ています。このアンケート結果を基に,具体的な関わり方や指導方法を考察していきましょう。

■いまどきの若手が描く理想の上司像

 【理想の上司像】 (2020年度実施)
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 1位 相談に乗ってくれる
 2位 人間的に尊敬できる
 3位 公平に評価してくれる
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 上記は「理想の上司像」について新人たちが回答した上位3位の結果です。「相談に乗ってくれる」上司像は昨年の2位から順位を上げ1位となりました。若手の定着で課題をお持ちのお客様から,上司の部下に対する接し方でよくご相談をいただきます。まだ右も左も分からない新人は,ちょっとしたことでも相談に乗ってほしいものですが,そんな部下のサインに気づけない,あるいは声をかけづらい雰囲気を出してしまう上司に対しては,困りごとを相談したくてもできず,結果,新人は大きなストレスを抱えてしまいます。新人若手の立場になって真摯に耳を傾けるなど,目線をそろえて伴走する姿勢を示すことが,指導でも肝心なポイントです。
 次に,2位の「人間的に尊敬できる」上司像について。そもそも人材教育の根本として「この人から教わりたい」と思われなければ効果は出ません。研修先の若手からは,「上手くできたことをあまり褒めてくれないし,失敗したときも叱ってくれないので,『私のことに関心ないのかな』って思っていました」など,部下に無関心な上司の話も聞きます。部下の指導法というと「褒め方・叱り方」がよく出ます。しかしそれよりも大事なのは目の前の部下に対する向き合い方や姿勢です。ですから叱るときであれば,「自分の間違いに気づく」「本人が改善策を考えられる」伝え方をして,教える側自ら本気の姿勢を示すことが指導のうえでも不可欠です。

■上司・先輩が接し方を変えるのが鉄則

 組織の生産性やマネジメントの原理を書いた『ハイアウトプット マネジメント』というベストセラーがあります。著者のアンドリュー・S・グローブ氏は,「部下にやる気を起こさせることはできない」「マネジャーにできるのは,部下が活躍できる環境を作ることだけだ」と述べています。では,若手が活躍するうえで,上司はどんな環境を用意すればよいでしょうか? 先の“理想の上司像”を基に考えると,「部下の相談には気軽に乗る」や「人格や人間性を高める」を意識し実践することが,新人若手の活躍する環境作りといえそうです。つまり,上司・マネジャー自ら率先して接し方を変えることが,若手社員が定着・活躍するうえでの肝になります。
 若者の仕事観や価値観は時代によって変わり,新しい考え方や価値観を持った若手は今後も入社してきます。かつてと同じ採用方法や,昔と変わらない職場コミュニケーションを続けていては,いつまでたっても若手は定着しません。経営者自ら若手の声を拾いに行くのもよいのですが,若手にとって経営者は気軽に接しづらい存在です。まず新人たちに身近な上司や先輩社員が接し方を変えていくことから始めていきましょう。このような組織を挙げた取り組みは一見遠回りのようですが,新人若手が活躍・定着するうえで一番の近道になります。

(月刊 人事マネジメント 2020年7月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
筑波大学を卒業後、ハウス食品株式会社に入社し営業職を経験。人材紹介業で数多くの求職者に対するカウンセラーを経験したのち、2006年に研修講師としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣(R)」研修をはじめとした「コミュニケーション改善系の指導」を得意としており、主に接客スタッフの指導や管理職社員の指導などの研修に登壇している。2016年に社員教育事業の事業責任者に就任し、2017年に執行役員、2019年に取締役に就任。今も現役で研修に登壇している。

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