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女性リーダーにメンターはいますか?

(株)MANABICIA 代表 池原真佐子

 「女性リーダーを増やさなければ,でもどうしたら?」「女性が管理職になりたがらないんだよね」そのような相談を多くいただきます。リーダー層に女性が増えていくことがなぜ必要(why)なのか。そしてそれはどうやって(how)実現していけばいいかという点に絞って考えてみたいと思います。

■なぜ「女性」がリーダー層に必要なのか

 皆さんの会社に,女性はどのくらいいますか? 近年は,育児や出産で離職する人も減っているので「うちの会社には結構女性が多いよ」「ママ社員も多いので女性活躍推進は進んでいる!」そう感じる方もいるかもしれません。
 では,何割の女性が「意思決定に関わる役職」にいますか? 一般社員の性別と同じ比率で,女性管理職も存在する日本企業はほとんどないでしょう。新卒一括で同質性の高い人材を採用し,何十年も同じ会社に勤め,同じ性別で同じようなライフスタイルの同じ顔ぶれのメンバーと阿吽の呼吸で仕事を進め,そして経営・組織の意思決定も,同質性が高い男性たちで,というのが現状だと思います。
 組織というのはバラバラでは意思決定のスピードは落ちますし,文化も醸成されません。一方で,同質性が高すぎると,時代の流れや消費者の多様なニーズに対応できなくなります。多様性が担保された組織は,イノベーションが生まれやすく,自分とは異なる視点の発想が相乗し合うことで,新製品が誕生したり,新しい経営戦略が発見されたりします。「組織の一体感」は,「同質性」ではなく「組織のミッション」で担保していけるのです。
 もちろん,多様性は性別だけではなく,価値観,ライフスタイル,国籍,言語なども含みます。働き方や価値観が多様化する今後は,女性に限らず,育児や介護や副業にコミットする男性(LGBTQも)増えてきます。女性が「働きやすい(例:ママ向けの制度が整っている)」だけではなく,女性が,マネジメントとして意思決定し活躍していける組織は,その他社員にとっても,働きがい・やりがいを持てる組織になり,優秀な人材を惹きつけます。

■女性リーダーが育つ鍵は「メンター」の存在

 女性を育てるというと,育休,時短など「ママフレンドリー」な施策を思いつくかもしれません。女性が長く働ける選択肢としては絶対不可欠ですが,リーダー育成にはそれだけでは不十分です。
 多くの男性には,新卒時からロールモデルがたくさんいますが,女性はどうでしょう。リーダーを目指そうと思っても,上司はほぼ男性で,自分自身のキャリア設計の参考にはなりません。配偶者の転勤,子供の有無,産後の働き方,育児などすべて働き方・キャリアに大きく影響するのが女性です。不妊治療をしながら管理職ができるのか,受験期の子育てをしながら部長が務まるのか……そのような悩みの糸口となるロールモデル,メンターは社内にいないのです。このような現状で「管理職になりたい!」と意欲を持てる女性は少数でしょう。
 この現状を突破する鍵は「ロールモデルとなる,同性メンター」です。しかも,「仕事一筋で私生活を捧げて上り詰めた女性管理職」だけではなく「時短部長」「配偶者の転勤に帯同しながらもリモートで管理職」「配偶者と育児を半々で担当している執行役員」など,多様なタイプの女性リーダーがベストです。目指す先に見える景色が真っ暗では,誰も一歩を踏み出しません。しかし,この先には色々な方法があるし,それをやってのけた人がいると思えたら「私にもできる」となりませんか? 社内にそのようなメンターがいなくても,「社外メンター」という方法があります。ぜひ参考になさってください。

(月刊 人事マネジメント 2020年11月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
早稲田大学、INSEAD卒。PR会社、NPO、コンサル会社を経て創業。女性リーダー創出のための社外メンター事業「Mentor For」運営。女性リーダー支援を通じて、多様な人が働きがいをもてる社会を目指す。第8回DBJ女性新ビジネスプランコンペティションファイナリスト/東京都知事賞女性パワー翔き賞受賞/第5回女性起業チャレンジ制度グランプリ受賞/ワーママオブザイヤー2018受賞、等。

>> (株)MANABICIA
 https://www.manabicia.com/