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エンゲージメントを高める仕掛け

(株)スタメン 執行役員 COO 森川智仁

 エンゲージメントへの注目が高まっています。企業のエンゲージメント向上を支援するITプラットフォーム「TUNAG」を運営する私たちは,エンゲージメントを「会社と従業員,従業員同士の相互信頼関係」と定義しています。よく従業員満足度と混同されますが,従業員満足度は,待遇・職場環境など会社から与えて得られるもので,業績によって変化します。一方,エンゲージメントは,信頼関係の構築を土台とし,お互いの理解,共感,会社への帰属意識,一体感を作っていくことを目指す考え方なので,外部環境に左右されず人と組織の強化が可能です。労働人口の減少,働き方改革,人材の流動化,人的資本経営やパーパス経営などの潮流によって,エンゲージメントに再び熱視線が注がれています。

■エンゲージメントの前提となる3つのステップ

 最初に,エンゲージメント向上の前提となる信頼関係の構築に必要な3つのステップを解説します。
 まずはお互いを@「知る」ことから始まります。その人が会社で何をやっているか,どういう人なのかなど「知る」コミュニケーションを繰り返します。知ることが一定量蓄積されると,その人をA「理解する」コミュニケーションへと深化していきます。そして,最終的にお互いに十分な理解が得られるとB「共感」へと変化していくのです。
 これらを繰り返すことにより,従業員同士の人となりを理解,共感し合えるサイクルが生まれ,信頼関係を作っていけます。この3つのステップは,エンゲージメントだけではなく,対人関係全般においても共通に必要なものといえるでしょう。

■エンゲージメントを高める施策例

 ここまで,エンゲージメントは信頼関係のもと成り立っていること,その信頼関係の構築に必要なステップを解説してきました。では,具体的にどのように取り組めばよいのでしょうか? 数多くの施策がありますが,ここでは入門として取り入れやすい施策を2つご紹介します。
@トップメッセージの発信
 経営者側から会社の理念やビジョン,今考えていることを定期的に発信していくことが価値あるファーストステップとなります。ここで重要なポイントは,決定事項の発表だけではなく,その決定に至るまでのプロセスや今後やっていきたいことをなるべく頻度高く,現場に伝えていくことです。特に最近は,コロナ禍など外部環境が大きく変化したため,従業員にとって先行きが見えない不安や不信感が募りやすい状態が続いていました。そこで「パーパス経営」のように,経営者の思いやビジョンを従業員に伝え,従業員と共に強い組織を作っていくのです。内容がまだ決まっていなくても,今何を考えていて,何を進めようと思っているかを発信していくことから始めてみましょう。
A新入社員による日報
 春から新入社員を迎える企業も多いと思います。そこでおすすめしたいのが新入社員による日報です。企業にとって,新入社員の早期戦力化や離職防止は非常に大切です。新入社員のオンボーディングにもつながる日報は,日々の学びのアウトプットとしてはもちろん,会社全体のエンゲージメント向上にもつながります。日報をオープンな場で共有するツールとすれば,既存社員からのリアクションや新たなコミュニケーションが生まれます。双方向のコミュニケーションが苦手な社員でも,新入社員への応援メッセージなどの形ならリアクションがしやすいでしょう。新入社員も自分を知ってもらえて,先輩社員ともコミュニケーションが取れるので,社内の活性化に効果的な施策といえます。

(月刊 人事マネジメント 2023年3月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
1991年生、愛知県出身。 新卒で人材系企業に入社し、新拠点の立ち上げや責任者を歴任。その後、創業メンバーとしてWEB関連会社を立ち上げ、事業運営、組織運営に携わる。2018年3月にスタメンに入社。インサイドセールス、マーケティング、カスタマーサクセス、それぞれの部門で責任者を務め、導入企業の拡大およびエンゲージメント経営を支援。2023年1月よりCOOとして事業統括と強固な組織づくりの推進を担う。

>> (株)スタメン
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