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中小企業が人的資本経営に取り組むヒント

フォーバル GDXリサーチ研究所 所長 平良 学

 人材を「資本」として捉え,その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値の向上を目指す「人的資本経営」への関心が高まっています。大企業を中心に情報開示や戦略的な人材投資が進むなか,中小企業においても人的資本経営の重要性が増しています。特に中小企業では,限られた人材で事業を支え,競争力を維持・強化していく必要があり,従業員一人ひとりの能力や意欲を引き出し,組織全体の成長につなげる取り組みが欠かせません。

■中小企業の実態と課題

 フォーバルGDXリサーチ研究所『BLUE REPORT』2025年10月号*によると,人的資本経営について「知っており,他の人に説明できる」と回答した企業は8.0%にとどまり,「知っているが,説明できるほどではない」は29.4%,「聞いたことはあるが,よく知らない」は30.9%,「知らない」は31.7%でした。また,取り組みの状況は,「十分取り組めている」が3.3%,「ある程度取り組めている」 が23.9%で,合計しても3 割を下回っています。「多様な人材の雇用・活躍の推進」「従業員エンゲージメントを図るためのITツールの導入」「差別やハラスメント禁止の徹底と従業員への教育」などの個別 施策を見ても,戦略的に実行し,継続的に改善している企業はいずれも2割未満にとどまりました。実行や継続的な運用はまだ十分に進んでいないことがうかがえます。さらに,人的資本経営に取り組めていない理由としては,「他の業務が優先されている」が39.1%,「何から始めればよいか分からない」が37.8%と,ともに4割近くを占めました。この結果から,日常業務に追われ優先順位を上げにくいこと に加え,進め方が明確ではないことが障壁になっていると考えられます。加えて,時間やコストの確保,社内の人材やノウハウの不足も取り組みが進まない要因として挙げられています。これらを踏まえると,中小企業における人的資本経営の課題は,必要性への関心の低さよりも,実行に踏み出すための体制や経営資源の不足にあるといえるでしょう。

■人的資本経営を実践するステップ

 では,中小企業はどのように人的資本経営を始めればよいのでしょうか。ポイントは,最初から大掛かりに進めるのではなく,自社の現状に合わせて段階的に取り組むことです。
 第1のステップは,「多様な人材の雇用・活躍」です。従来の採用対象にとどまらず,多様な経験や価値観を持つ人材を受け入れ,それぞれが力を発揮できる環境を整えることが重要です。
 第2のステップは,「従業員エンゲージメントを把握する仕組みづくり」です。従業員の意欲や働きがい,組織への信頼感を可視化し,改善につなげることで,働きやすい職場づくりが進みます。
 第3のステップは,「差別やハラスメントを防ぐ職場環境の整備」です。安心して働ける環境は,あらゆる取り組みの土台となります。ルールの整備に加え,継続的な教育や対話を通じて,互いを尊重する組織風土を育てることが重要です。
 同調査では,人的資本経営に取り組んでいる中小企業において,人材強化や従業員の意欲向上に加え,競争力の強化や売上拡大といった面でも効果が実感されていることが示されています。中小企業は,経営層と現場の距離が近く,柔軟に組織を運営できます。この強みを生かしながら,人材の力を引き出し,働きやすい環境づくりを進めることが,持続的な成長と企業価値の向上につながるでしょう

*フォーバルGDXリサーチ研究所『BLUE REPORT』2025年10月号
PDF >> 「中小企業の人的資本への対応戦略」

(月刊 人事マネジメント 2026年5月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
1992年、株式会社フォーバルに入社。九州支店での赤字経営の立て直し、コンサルティング事業の新規立ち上げ、全体統括を経て、2022年に新たに発足した中立の独立機関「フォーバルGDXリサーチ研究所」の初代所長に就任。中小企業経営の実態をまとめた白書「ブルーレポート」の発刊、全国の自治体と連携し、地域の中小企業経営者に向けたDX、GXの講演、中小企業経営者向けのイベントの企画などを通じて、中小企業のGDXを世に発信している。

>> フォーバル GDXリサーチ研究所
   https://gdx-research.com/





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