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書評 2011.09

部下のポテンシャルを120%発揮させる「やる気」のルール

 不動産管理会社のワンマン社長が自らのマネジメント姿勢を改め,若手幹部たちに権限を委譲し「イキイキ・わくわくする職場」を作り上げていくドラマ仕立ての社風変革物語が描かれている。といっても,ワンマンゆえに社長自身の反省は難しく,また,若手ゆえに幹部社員らの改革も手探りの展開となる。そして職場は多くの会社に共通しそうな課題にあふれ,人物それぞれの葛藤もリアルだ。当初は強烈なリーダーの影響で「学習性無力感」が蔓延する職場であったが,組織横断プロジェクトが動き出すにつれ,問題現象を拾い,真因を分析し,解決のための改善仮説が打ち出されていくようになる。やがて,メンター制度や相互に承認する仕組みなど風通しを良くする施策が打ち出され,ミッションを共有できる状態にまで改革は進む。また,要所にコンサルタントが登場することで,仲良しサークルに陥るのではなく,緊張感を維持し競争を楽しむ環境も築かれていく。社員の自主性に課題を抱える職場は,まず,この物語の共有から取り組んではいかがだろう。

●著者:柳楽仁史  ●発行:総合法令出版/2011年7月18日
●体裁:四六版/212頁  ●定価:1,300円(税別)

結束力の強化書

 スタープレイヤーを集めたとしてもチームがまとまるとは限らない。そう考えるとき,社員の配属・異動で成り立つ会社組織で結果を出していくことがいかに困難かは自明だ。しかし,たとえ寄せ集めに等しい組織でもチームワークを機能させ,高い業績を挙げていく方法はあるとし,著者はそのカギを「結束力」に見つけている。具体的に本書に整理されているノウハウの柱は,@共通の目的を作る,Aやらないことを決める,B信頼関係を深める,C助け合えるフォーメーションを築く,の4つ。どの職場にも身近と思われるストーリーが紹介され,チームリーダー(プロジェクトリーダー)の皆さんにとっては必読のポイントが満載だ。また,人事部門の立場からは,「メンバーポートフォリオ」(縦軸=目標共感度×横軸=パフォーマンス)の4象限分析なども納得度高く,面白く読めるかもしれない。結束力の真髄は,個々人の能力を超えた成果がもたらされるところにある。まずは,序章の「チームのバラバラ度チェック」からトライしてみよう。

●著者:荻阪哲雄  ●発行:ダイヤモンド社/2011年7月28日
●体裁:四六版/183頁  ●定価:1,429円(税別)

サラリーマン3.0

 高度成長期型の“サラリーマン1.0”や,自己啓発に傾斜し疲弊する“サラリーマン2.0”は,時代に合わなくなってきたと著者は語る。そして今後は思考や行動を会社に縛られない“サラリーマン3.0”の時代が到来するとして,新しい働き方を提案している。例えば,加算金がもらえるから退職するとか,時間だから会社に行くとか,平日だから仕事に集中し休日は寝るだけ,といった受け身の行動選択ではなく,公私の垣根なく常に自分をコントロールする自律的なスタイルを推奨する。そして,著者も認める通り,その選択は自由度が高い分だけ実はラクではない。とはいいつつ,「歳のせいにしない」「運をあてにしない」「資格に頼りすぎない」「のめり込まない」と,どこか力の抜けた姿勢でもある。恐らくは,一定の余裕を維持し,リスクをも楽しめるかどうかが“3.0”を極める一つのカギということだろう(ちなみに3.0の先はもはやサラリーマンではなく起業家だとされる)。サラリーマンの働き方を論じつつ,実は読者の生き方を問う,意外に深いかもしれない1冊。

●著者:伊関 淳  ●発行:中経出版/2011年7月30日
●体裁:四六版/239頁  ●定価:1,400円(税別)

就活は子どもに任せるな

 現在進行する新卒就職難の正体は,企業が求める人材と求職者との質的ギャップであると著者は見通す。学校名・学卒といったラベルの価値ではなく,“個々人の必要とされる価値”が問われる時代だとし,「せめて大学だけは」という程度の認識で進学を勧めた親には共同責任がある,と続ける。本来,就活は中長期の戦略であり,中高生の頃から将来の目標や職業意識の形成を図り,そのために必要な教育を考えて進学するのが筋だとし,塾に通わせる前に親子で話し合う必要性を指摘している。その際,親には社会の変化を伝え,給与の意味や労働感など様々な判断材料を提供する役割があるとする。説教ではなく傾聴の姿勢で臨み,愚痴ではなく親自身の失敗談を語り,現在位置の確認から取り組むようアドバイスする。一方で,すぐにでも内定が必要な短期の就活については,採用者(経営・人事)目線で本音と実態を語り,“性格のデメリット克服法”なども伝授してくれる。就活生を抱えているかどうかに関わらず,キャリア観の再考を迫られそうな内容だ。

●著者:鈴木健介  ●発行:中央公論新社/2011年8月10日
●体裁:新書版/223頁  ●定価:760円(税別)

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki