*

HRM Magazine

人事担当者のためのウェブマガジン | Human Resource Management Magazine
HOME
 HR BOOKs
  

書評 2020.06

ニュー・エリート

 日系ブラック企業から外資系金融・IT企業へと転職を重ね,現在はキャリアコーチを手掛ける著者が,職場のサバイバル術を打ち明けた1冊。外資系企業に採用される方法から,思考・教養,コミュニケーション,メンタルタフネスに至るまで,5章22トピック,全文コミカルにぶっちゃけた語彙で突っ走る。スキル面では英語のブラッシュアップはマストだと語り,「血反吐を吐いてでも学習すべき」と表現する。さらに査定・処遇は上司が握っているので,「好かれ・引き抜かれるしかない」と覚悟を迫りつつ,360度評価の事情もあるので,“同僚とうまくやる”バランス感覚も大事だと諭す。交渉や議論のスキルも身につけたいが,相手を打ち負かしたのでは社内政治的に“死ぬ”のは外資でも同じ。事実と感情を切り分けて受け止め,オキテを理解し,合理的に仕事を進め,自ら成長していく姿を理想に挙げている。日本でも,効率・生産・成長・競争に価値を置く会社が増えてきたタイミングであり,著者の知見は今後多くの勤労者の参考になるかもしれない。

●著者:ずんずん  ●発行:KADOKAWA/2020年3月21日
●体裁:四六版/200頁  ●定価:1,300円(税別)

部下のトリセツ

 メーカー社員,システム会社への転職,取締役への就任・解任,独立・創業と,変化の激しい著者の半生からにじみ出たリーダー論。「自己開示」に続けて「聞き方」「言い方」「育て方」「接し方」の5章36トピックを綴っている。自ら小さな会社のリーダー経験を積んできたと語る通り,各トピックは,今どきのありがちな部下の姿そのものだ。例えば「(会議で)意見を求めても反応がない」「『これって意味ありますか』といって仕事をしない」「『言われていないのでやっていません』と指示以上のことをしない」「何度注意してもダメなところが治らない」等。ただ,これらの問題に対し,本書は正解をズバリとは示さず,まず3つの選択肢を挙げて読者にしばし考えさせる。その先の正解の方向性は,最近のリーダー論でおなじみの,傾聴,サーバント型,対話型,問いかけで気づきを促す,失敗に寛容な挑戦しやすい環境作り,といったスタンスに重なるようだ。「部下のトリセツ」とは「上司の自覚と行動」に他ならないという表裏の関係に改めて納得。

●著者:浅野泰生 ●発行:総合法令出版/2020年3月22日
●体裁:四六版/256頁  ●定価:1,400円(税別)

全員を戦力にする人財育成術

 ハンバーガー大学・ユニクロ大学を手掛け,外食産業各社の役員を経て独立。数々の企業支援を展開中の著者が人財育成のノウハウをまとめた1冊。教育・評価・労働環境の3つが整備されていれば人は辞めなくなるという独自の法則を前提に,入社した全員を人財に育てていく“義務教育”の進め方を公開している。とりわけキモとなるのは「仕組み化」と「グローイング・サイクル」とよばれる4要素(@基準を示す,A教える,B要求する,C評価する)の運用だ。研修のやりっ放しでは,人の成長も経営の成果も得られないと断言し,教育・評価の両輪運用による体系化を力説している。また,均質サービスの徹底という事業戦略性を確保するうえで,上司任せの属人化を警戒し,会社が求める行動の明記と,評価者の目線を合わせる評価会議の実施は不可欠だと述べている。実際に仕組みを取り入れ“会社が変わった”3社の成功事例を紹介し,最終章では要点を39のTIPSで念押し。マクドナルドやユニクロの人財力がなぜ強いのか,その核心が理解できる。

●著者:有本 均  ●発行:ダイヤモンド社/2020年4月1日
●体裁:四六版/207頁  ●定価:1,500円(税別)

図解 新型コロナウイルス職場の対策マニュアル

 大手をはじめ企業クライアント向けの危機管理コンサルティングを担ってきたベテラン産業医が緊急にまとめた50に及ぶQ&A解説。「基礎知識」「働く人」「職場」の3部構成で新型コロナウイルスへの対策手段をレクチャーしてくれている。最も気がかりな“終息の見込み”では,感染の流行が第2波,第3波と続く可能性を指摘する。そのうえで,個人向けには,上司や周囲の言動に関わらず「不要不急」は自ら判断していくべきだと述べ,通勤電車や職場での接触感染回避の注意点を紹介している。一方,会社には複数のシナリオを想定して事業再開の打ち手を検討していくよう提案。また,従業員が「発熱した」「感染・入院した」さらには「回復した」場合の組織・各部署の対応や,「欠勤の予測に基づく人員計画の策定フロー」を示し,妥当な行動を選択していけるよう参考になりそうな諸資料を掲載している。サプリや消毒を巡る「迷信」,日々報道される「数字」の意味など,正しい理解と行動のためのアドバイスを盛り込んだコラム欄も必読だ。

●著者:亀田高志  ●発行:エクスナレッジ/2020年4月13日
●体裁:四六版/128頁  ●定価:1,400円(税別)

HRM Magazine.

【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki