書評 2026.4
コンサル業界大研究[第9版]
1998年の初版から改訂を重ねた第9版が登場した。前作第8版は東大生協書籍部で最も売れた注目の1冊だ。内容は,コンサルティングファーム業界の概要,コンサルタントの仕事,キャリアパス・報酬水準,専門分野の領域分類など。コンサル業界の歴史では江戸時代にまでさかのぼって担うべき機能の本質をひもとく一方,今の時代のホットトピックでは「AI」と「地政学」を取り上げ動向を追う。実名で登場するコンサルタントたちのインタビューからは,やりがいや鍛えられる能力など生の声も聞け,役どころ,働きぶりが身近に理解できる。本書が学生たちに注目される最大のポイントは,仕事選びの参考資料としてのコンテンツだ。「コンサルティングファームに入るには」と題した章では「新卒編」と「中途編」に分けて就活のアドバイスを盛り込んでいる他,育成トレーニング,配属の実際も垣間見られる。後半では31社のファームをリスト化し,いわばコンサルティングカタログに編纂されている。確かに業界地図を眺めるだけで何となく面白い。
●著者:渡辺秀和/山越理央 ●発行:産学社
●発行日:2026年1月15日 ●体裁:四六版/387頁
裏表がありすぎる人
上司には歯の浮くようなお世辞を言い,陰でその上司を辛辣にこき下ろす。あるいは利用価値のありそうな人には笑顔で近寄り,一転,価値がないと分かると冷たく突き放す。また,いい人に見られたいとの思いから相手に言うべきことを言わず,その場を離れてから人が変わったように暴言を吐いたりする。このような二面性のある人の特徴と付き合い方を心理学の専門家が解説する。問題となる“裏表人間”の二面性は,相手を傷つけまいとホンネとタテマエを使い分ける日本社会の“間柄の文化”と異なり,承認欲求や自己愛,劣等感コンプレックスが突出し,対人関係をユーモアで受け止めず屈辱感を膨らませてしまうなど認知の歪みが背後にあると分析。権威に弱く,弱者に容赦せず,自分の豹変ぶりを気にしないといった傾向を見抜く際のヒントに挙げる。“裏表人間”から身を守るには,深入りしない,雑談にも安易に同調しない,自己開示は控えるといった向き合い方が有効であり,相手の心理メカニズムを知っておくことが対処の助けになるとまとめている。
●著者:榎本博明 ●発行:幻冬舎
●発行日:2026年1月30日 ●体裁:新書版/195頁
定年前後のキャリア戦略
60代半ばの著者が“60代にしか書けない視点”を重視して綴るキャリア論。まず,「ずっと会社員だった人」の場合,60代前半で95%,60代後半で89%が働き続けているという数字に驚かされる。働く理由では「生計維持のため」がトップながら,十分資産がある人も「お金の心配」に囚われている傾向を読み取っている。人事施策では60歳時点で一律に処遇を引き下げるケースが最多。個別対応は8%に過ぎず,この一律処遇が,人手不足下の中高年リストラという矛盾を引き起こしていると分析する。60歳以降の処遇では「半・現役」が大半で,隠居状態に置かれた人から「キャリアが終わった」「忠誠心が下がった」という生の声も拾う。それでも,「元気なうちは働く」と本人たちは口にするが,健康寿命(男性72.57歳・女性75.45歳)を視界に入れると「元気なうちに辞める」のが正解ではないかと著者は語る。「24時間,戦エマスカ。」で育ち「働かないおじさん」と揶揄されてきた世代にとっては等身大のトピックが並び,食い入るように読めてしまう。
●著者:藤井 薫 ●発行:中央公論新社
●発行日:2026年2月10日 ●体裁:新書版/247頁
定年5年前からの「やってはいけない」
リクルート勤務時代から“できる人”へのインタビューを重ね,約40年1万人に及ぶ体験談を蓄積してきた著者が「後悔しない会社人生の終え方」をレクチャーする。雇用延長後も会社の期待に応え,後進の指導に努め,満期で退職を迎えるといった一見順当な働き方は会社にとって都合のいい人に過ぎず,その後は行き詰ると警告。年収の低い定年延長者が年収の高い新人・若手を指導する構造は滑稽だと突き放し,定年前の5年間は仕事をせず,次の人生の準備を優先しようと視野の拡大を誘う。収入減を見越して縮小均衡の節約生活を覚悟するのではなく,身動きが取れなくなる前に自分で稼ぐ道を見つければよく,そのために“できる人”たちが定年5年前からやってきたことを順序立てて示す。退職後にゆっくり考えたのでは億劫に負けるので,集中して考え抜くのは定年前の5年間だと念を押し,年金で足りない分をイヤイヤ働くのではなく,ライス(食うため)とワーク(心の充実)のバランスを保った豊かなセカンドライフを目指そうと読者の背中を押す。
●著者:大塚 寿 ●発行:PHP研究所
●発行日:2026年2月12日 ●体裁:新書版/231頁
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