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セルフモチベーションの効能に注目

学校法人産業能率大学 総合研究所 主幹研究員 野間健司

 企業の教育研修で今,最も伸びている分野の1つが“モチベーションアップトレーニング”だ。狙いは,セルフモチベーションスキル,つまり社員各自が自分自身でモチベーションを高めていくスキルを習得することにある。社員が自分でモチベーションを上げることができれば,管理者が部下を叱れないと嘆いたり,報酬をちらつかせて社員のお尻を蹴飛ばす必要もない。しかも,モチベーションは瞬時に高めることが可能であり,セルフモチベーションスキルのトレーニングは極めて投資効果が高い教育研修といえる。
 モチベーションスキルは心理学,脳科学等を背景にした技術(スキル)体系であり,学習すれば誰でもすぐに使える。製造ラインでも研究開発部門でも,トップでも新入社員でも誰でも応用できる。1日のトレーニングだけでも一定の効果は見込める。例えば,目標設定の前にセルフモチベーションスキルをトレーニングしておけば,目標達成意欲は高まるし,他にも様々な効果がある。快適な感情を創り出すスキルゆえ,メンタルヘルス研修やチームワーク向上にも有効だ。

■管理者にこそセルフモチベーションスキルが必要

 人生では中年期が最もモチベーションが低下するというデータがある。その時期にあたる管理者層では,モチベーションの個人差が大きい。モチベーションの高い管理者だけであれば問題はないが,実態はそうではない。管理者のモチベーションが低いと,自動的に部下のモチベーションを下げる(防衛)行動を誘発する。つまり,教育研修の企画では,一般社員のモチベーションを上げようとする前に,管理者自身のモチベーションを一定レベルまで引き上げる必要があるのだ。セルフモチベーションスキルの習得は管理者の最重要課題といえる。

■仕事を含めた人生の前向きな意味づけを問え

 人生でも仕事でも,起きてしまうことはコントロールできない。自分でコントロールできるのは,唯一,意味づけである。社員たちは自分の目標に,どんな意味づけをしているだろうか。“やらないとまずい”という苦痛の意味づけもあれば,“この目標で自分は成長できる!”といった前向きな(快感の伴う)意味づけもある。目標に前向きな意味をつけるためには,仕事に対して前向きな意味をつけていなければならない。そして仕事に対して前向きな意味をつけるためには,人生に対して前向きな意味をつけている必要がある。
 例えば,“人生は心(魂)を成長させる場だ”という意味づけができていれば,仕事は成長の手段であり,困難な目標課題に対しても,“困難だからこそ成長できる!”という意味づけが生まれる。このように,本物のモチベーションのためには,人生と仕事に対する前向きな意味づけが欠かせない。何のために人は生まれ,何のために仕事をするのかという,人生の問いに答えなければならないのだ。ここを避けると,モチベーションアップはもちろん,人を幸せにする組織も実現できない。その意味ではモチベーショントレーニングとは,ビジネススキルの習得を越えた人生教育ともいえる。
 今,企業経営のあり方は大きく変化している。企業は単に経済活動の場というだけでなく,人間教育の役割をさらに求められるようになるだろう。正しい考え方・正しい見方こそが,人生のモチベーションを高める。モチベーショントレーニングは,企業も人もどこに向かうべきなのかを改めて問い直す絶好の機会となるはずだ。

(月刊 人事マネジメント 2012年12月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

  
1964年生まれ。中央大学法学部卒業。大手コンサルタント会社に勤務後,外資系企業の日本代表を務め,現在は学校法人産業能率大学で企業研修や講演会を行う傍ら,パーソナルコーチング,メンタルカウンセリングを行っている。過去25年以上で,のべ2,000社以上の上場企業や中央省庁の組織変革の指導,リーダーシップトレーニング,モチベーショントレーニング等を実施。モチベーションスキルの普及をライフワークとし,モチベーション研修の実績社数は業界トップクラス。米国NLP協会公認トレーナー。3.11以降は東北地方の復興支援のために,講演会やカウンセリング活動を精力的に行っている。E-mail ken.moti@i.softbank.jp

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 http://www.hj.sanno.ac.jp