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決断できる人材の特徴と鍛え方

(株)決断力 代表取締役 / 決断力プロデューサー 高島 徹

 現代は,先行き不透明な時代,グローバル競争の時代とよくいわれます。こうした時代には,これまでの経験や知識が役に立たない場面がよくあります。ネット上ではたくさんの情報を簡単に集めることができますが,その情報を読み解いて必要な決断のできる人こそ,今の時代に本当に求められている人材だといえるでしょう。では,決断力がある人にはどんな特徴があるのでしょうか?

■決断できる人は何が違うのか?

 決断できる人は,自分の「価値観」が明確になっています。何が良くて何が悪いということ,どれくらいまでなら大丈夫といった基準をはっきり持っています。従って,決断にあたって迷いがなく,軸がブレません。こうした人がリーダーであれば,周りも安心感が持てます。
 決断できる人は,「優先順位」を明確にしています。大切にしたいものはたくさんあっても,どれを優先する,どれは後回しにしてもよいという基準がはっきりしています。欲張りすぎて混乱したり,一時の感情で決めたりしないのです。
 決断できる人は,「情報収集の大切さ」を知っています。しかし,情報収集には時間をかけません。ある程度で切り上げ,分析に時間を割きます。情報はいくら集めても完璧にはなりません。また,時間をかけてもいずれ結果は明らかになります。情報を集めるより活かす重要性を理解しているのです。
 決断できる人は,「タイムリミット」を守ります。ある期間内に行うからこそ決断なのです。決断しなくても時間は流れていきます。そして,ある結果がもたらされます。タイムリミットを過ぎてから悔やむのは,決断できない人です。決断できる人は,ちゃんと時間内に自分の方向性を打ち出しています。
 決断できる人は,「数値を使って物事を定量化」し,判断材料としています。良い悪いを判断するにあたっては,定量化しないと比較検討ができません。頭の中で考えるだけでなく,企画資料を作ったり,書いて考えたりするための大切な要素が数値です。物事を見えるように,比較検討しやすいようにして決断力に結びつけているのです。
 最後に,決断力のある人は「参謀」の意見を聴き分けます。参謀とは,自分のことを本当に心配してくれ,かつ物事に対する知見が豊富な人のこと。決断できる人は素直に他者の意見を聞き入れ,そして最後は自分の頭で考えて決めます。聴く耳を持たなかったり,他者の意見に流されてしまうことはありません。人の意見の大切さを知りつつも,バランス感覚を持って決断をしています。

■決断力を高めるためには?

 では,このような決断力を身につけるためにはどうすればいいのでしょうか? まずは,自分が決断することと,他人に委任できることの区別です。すべてを自身で抱え込むのではなく,上司,部下,他部門などに役割分担を求めるのです。次に,“自分がやる!”と決めたことは,絶対にやりきることです。うまくいかなくても,他人や環境のせいにはしません。万一,失敗した場合でも,本当の責任がどこにあるかは周りの人には分かっているものです。言い訳するだけ信用されなくなります。そして,最後は,職責に応じた「決断」です。上司,経営者には意見具申を,部下には責任範囲を明示して権限を委譲するのです。
 決断力を鍛えるには,特定のパターンを教え込むより,その人の持つ良さを引き出す働きかけが有効です。つまり,管理職が決断してチャレンジングに行動することが推奨され,個人の良いところを伸ばせる組織風土づくりがポイントになります。

(月刊 人事マネジメント 2015年10月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
1963年生まれ。香川県出身。神戸大学経済学部卒業。松下電器産業(現パナソニック)に入社。松下幸之助の直轄部隊である経理社員として、事業計画策定、月次決算、経営課題検討を通じて事業部長の経営上の決断をプロデュースすることで、経営視点での「決断力」と経営者の動かし方を体得。その後、経理責任者としてエアコン事業、半導体事業、本社部門で勤務。28年間で85個のプロジェクトに取り組む。2014年、株式会社決断力を設立。現場での問題解決を主体的に行い、ビジネス現場で使える「決断力」(多様な人々を動かすスキル)の研修、講演、セミナー、コンサルティングを展開中。現場で「やりきる」コンサルタントとして信望を得ている。

>> 株式会社決断力
 http://www.decision2007.com