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表彰制度を大成功させる3つの視点

(株)ゼロイン 取締役副社長兼COO 並河 研

 社内イベントのなかで「表彰」は,定番中の定番。周年式典での永年勤続者表彰から,年に1度の社員総会や,半期・四半期ごとの事業部での成績優秀者の表彰まで実に多岐にわたる。演出的にも,インセンティブ旅行と称して家族同伴で外国に招待するものから,社員総会のステージで万雷の拍手を浴び栄光のブレザーを羽織るもの,『TED』ばりのプレゼンを行うものまで様々なバリエーションがある。
 「表彰」は,多くの経営スタッフが知恵を絞り,マンネリ感があるとか言われながら,やってもやってもきりがない難物である。一方で,“この1年,表彰されるために頑張ってきた”という当人の気持ちや,“来年は絶対自分があの場所に立つ”と決意する仲間のモチベーションまでを考えると,決しておろそかにはできない。AIやロボットならいざ知らず,人間の集う企業組織である以上,表彰をどう扱うかは,センシティブにして今後ますます重要な経営課題の1つだといえる。表彰を効果的に機能させるにはどうすればいいのか。「評価の軸」「現場」「表彰の場」という3つの視点に着目し,整理してみたい。

■評価の軸と現場は整合性がとれているか

 まずは,評価の軸と現場の関係に注目してみよう。
 評価には概ね2つの軸がある。1つは企業が目指したい姿,社員にぜひそのように行動してほしいという行動基準に照らして褒めるビジョナリー型の評価。もう1つは,勝ち筋を生産性高くやり切った結果,競合優位を勝ち取り高業績につながったことに対する評価,コンピテンシー型である。この2つの評価の軸と現場の関係をみると,ビジョナリーな行動やイノベーティブなチャレンジは,えてして短期の高業績にはつながらない。一方で,コンピテンシー型は「アタリマエ行動」の高度な積み重ねで,短期的かつ再現性において誰が見ても分かりやすい業績として映る。
 さて,経営はどちらを評価すべきか。“ふさわしい行動なのか,高業績へのがんばりなのか,いったい会社はどちらを望んでいるのだろう?”と社員たちが混乱しないような工夫が必要だ。

■評価の軸を反映させた表彰の場になっているか

 次は,評価の軸と表彰の場の関係について。
 表彰の場の設計にあたっては,コツコツ積み重ねたビジョナリー型の行動を称え共有する場なのか,コンピテンシー型の行動を徹底した結果の高業績を表彰する場なのかを明確にしておく必要がある。長年をかけて地道に顧客に向き合い,不動の信頼価値を築き上げたという業績もあれば,戦略方針に従って,自ら新しい技術を学び積極に挑戦してブレイクスルーを切り開いたという業績もある。どちらも褒めてやりたいが,同じステージで表彰してしまうと,今,どちらの行動をとるべきなのか社員には分かりづらい。私たちの顧客企業では,ビジョナリー型のプレゼンイベントと,コンピテンシー型の表彰式を別々に開催している企業も増えている。

■表彰式は現場に好影響をもたらしているか

 3つ目は,表彰の場と現場の関係である。
 表彰式では,モチベーションを上げる演出は大切にしながらも,業績の中身を,顧客,事業の課題,背景等まで含めてきちんと伝えること。そして,どのような思考プロセスを経て,どのような行動を起こし優秀な成績を獲得できたのかを共有することが重要である。壇上に登れなかった社員が“あ,これだったら自分もできる”と思い,“明日,自分の仕事の仕方を少し変えてみようかな”とヒントを得られる場なら,表彰式は現場へとつながっていく。
 「評価の軸」「表彰の場」それらがつながる「現場」。これら3つを意識した表彰制度を心がけたい。

(月刊 人事マネジメント 2018年11月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
1984年に株式会社リクルート入社。社内広報室で一貫して映像畑を歩み、社内コミュニケーション施策や教育映像などをプロデュース。 その後ゼロインに入社し、様々な企業の組織活性化を手掛ける。2009年に取締役、2014年より取締役副社長兼COOに就任。同時に社会人アメフットチームのオービックシーガルズGM、株式会社OFC代表取締役も務める。

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