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ハイスキル人材に選ばれるには?

ロバート・ウォルターズ・ジャパン(株) 代表取締役社長 Jeremy Sampson

 少子化で労働力人口が減り続ける日本。日本企業の多くは,グローバル事業の拡大に向かう傍ら,本質的な伝統を守りながら年功序列などの企業文化には変革を強いられ,大きな転換期を迎えている。日本と西洋の企業文化には違う点がいくつもある。日本の会社員は組織と仕事への忠誠心が高い。プロセスを重要視するためサービスの質,仕事の精度は特に優れている。先日大手企業の社長にお会いし,喫緊の事業課題をうかがうと,社長は「生産性の低さ」を訴えていた。生産性は日本企業が共通して抱える課題だ。日本企業の多くで残る年次管理による人事の仕組みもその一因ではないだろうか。成果主義評価に基づく昇進システムへ見直すだけでも,効率化は進み生産性も上がると思えるのだが。
 今の有効求人倍率を見ると求職者1人に対して1つ以上の仕事があり,東京なら2つに上る。経済が好調な限り,人材の需給ギャップは広がるため,働き方改革に沿ってワークライフバランスの見直しやテクノロジー導入などの企業努力が広がった。ただ,労働力人口が減る一方で,人材供給が需要を上回っている領域もあり,働き手自身の意識転換も今後必要になるだろう。事務職従事者,定年間近のシニア層が人材需要の高い領域の教育を受けて仕事を担うようになれば生産性向上にもつながるはずだ。

■ハイスキル人材の獲得競争は激化

 RPAや工場自動化(FA)などの自動化が進み,収益に直結する業務に人知とマンパワーを集約させる企業が増えたことで,専門知識・スキルに富んだハイスキル人材の獲得競争は勢いを増している。例えば,AIなどの先進技術,ビッグデータ,セキュリティ,アプリ開発,クラウドや5Gなど自動化のインフラに携わるIT関連職。化学メーカー,自動車メーカー。FP&A,HRBPなど戦略的なアプローチを要す仕事などだ。インバウンドの好調を受けて消費財・小売・ホテルでもバイリンガル人材の不足が目立ち,需要と供給は,1:20まで広がる分野も出ている。転職希望者の数も3年前に比べて3割増えていて,当社の調査でも回答者の7割が1年以内の転職を希望する結果となっている。しかし,求人と求職者のスキルセットにもギャップがある。限られた優秀なハイスキル人材に選んでもらうために,企業は何をすべきなのか。転職を決める際に,ハイスキル人材が着目するのは,@「何を任せられ,成し遂げられるか」,A「どれだけの収入を得られるか」,B「自分の価値を正当に評価してくれるか」の3つだ。

■一歩進んだ採用はどこが違うのか?

 競争力のある給与額を提示することで,カウンターオファーや競争相手を引き離す企業も目にする。しかし,ハイスキル人材が転職先を見極める際のポイントは,転職先企業が描くビジョン,事業の成長性,技術革新への投資,社内のキャリアパス,研鑽が積める環境,そして仕事の面白さだ。さらに一歩踏み込んで,面接・選考過程で候補者にこれらの魅力をしっかり売り込んでいる採用担当者は意外に少ない。転職回数の少ない人物を書類で絞り込む企業がある一方で,業務成績が高ければ転職回数は優れた順応性の証明だとして評価する企業もある。質問を投げるだけの面接を続けている企業の傍らで,中長期投資・経営戦略とその職務の関わりを説き,研修プログラム・昇進機会を熱く語って採用を成功させている企業もある。人事担当者が“審査する側”に座っている限りハイスペック人材の採用などできないだろう。高額報酬の提示が無理だとしても,例えば面接の場ではキャリアパスの魅力を伝えるなどプレゼンのつもりで臨めば,ハイスキル人材に選ばれる企業に一歩近づけるのではないだろうか。

(月刊 人事マネジメント 2018年12月号 HR Short Message より)

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オーストラリアでホテル、スポーツメーカーにて営業職を経験した後、2006年にロバート・ウォルターズ・ジャパン株式会社に入社。2009年にはセールス&マーケティング・工業部門の新設に伴い同部門のマネージャーに昇格。2013年より商工業部門 ディレクターとして自動車・電機・化学・エネルギー・インフラ業界を専門とする9つのチームを統率し、当社の成長に貢献。オーストラリア出身。グリフィス大学経済学部(オーストラリア・クィーンズランド州)卒業。

>> ロバート・ウォルターズ・ジャパン(株)
 https://www.robertwalters.co.jp/