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シニア社員を活性化させるポイント

マンパワーグループ(株) ライトマネジメント事業部
タレントマネジメント部 シニアコンサルタント 淺原亮一

■なぜシニア社員のモチベーションは下がるのか

 シニア社員の活性化は企業が取り組まなければならない大きなテーマの1つです。なかでも特に問題となるのが,人事制度上の役職定年や定年再雇用の直後に大きくモチベーションが下がってしまうことです。処遇が大きく下がったことが起因しているように思えますが,それは1つの要素にすぎず,役職定年や再雇用のタイミングで会社から期待される役割が大きく変わったことに対するショックのほうが大きいように思えます。具体的にいうと,メールの数が極端に少なくなる,定例の会議に出席しなくていいと言われる,これまでアクセスできていた社内情報が見られなくなるなどです。このような,突然の変化に対して本人の心理的な準備ができていないことが原因といえそうです。
 人は望まない変化に直面したときに,@否定,A抵抗,B探求,C決意という段階を経て,その変化を徐々に受け入れていくということが分かっています。「@否定」の段階は簡単にいうと“その変化は自分には関係がない”という心理状態です。それがいよいよ,この変化は自分に関係してくる,影響があると分かると“その変化に対して激しい抵抗や否定の感情を抱く”ようになります。それが「A抵抗」の段階です。そして,「B探求」の段階になると視点は将来になり,変化に対して徐々に前向きに受け入れるようになっていきます。「C決意」の段階までくると変化を受け入れ,変わった状態が日常化します。つまり,シニア社員を活性化させるためには,「@否定」「A抵抗」の段階をいかにうまく乗り切って「B探求」の段階へとスムーズに入ってもらうかがポイントといえます。

■変化をうまく受け入れてもらうためには

 役職定年や再雇用といった変化が大きいほど,受容するまでに時間がかかります。企業が役職定年や再雇用までシニア社員に対して何も手立てをしなければ,「@否定」からいきなり「A抵抗」の段階となり,変化の受け入れに時間がかかってしまう結果,モチベーションダウンが長く続くという状況になってしまいます。少なくとも,役職定年や再雇用の2年〜3年前のタイミングでどういう変化が待ち受けていて,変化の後の状況がどうなのかをリアルに本人にイメージしてもらうことが重要です。
 そして,変化に対する不安や不満について何が原因なのかを内省し,吐き出してもらう必要があります。これは日常の業務を遂行しながら,本人に考えてもらうということは難しいので,1日もしくは2日,同じ状況の社員同士が本音で話せる場を研修やワークショップとして設定することが有効です。

■変化を考えてもらう際のポイント

 これから起こりうる変化について考えてもらう際に,変化にはマイナス面だけではなく,メリットもあるという観点を持ってもらうことが重要です。処遇が低くなる,役職が外れるといったマイナスの面以外に,1プレイヤーとして裁量性を持って自身の専門性を高めることができる可能性もあるわけです。
 また,長期的な視点でこれからのキャリアを考えてもらうこともポイントです。シニア社員の成長意欲が課題となっていますが,新しいことに挑戦し,それを活用する機会がないと思ってしまえば,成長しようという意欲はなくなってしまいます。「人生100年時代」といわれる今は,本人の意欲と能力があれば定年後も働き続けることは可能なわけです。これから活躍できる場を,今の会社に限定する必要はなく,もっと長期的な視点を持ってもらうことが重要です。

(月刊 人事マネジメント 2022年2月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
大学卒業後、大手金融機関に入社。新規コールセンターの立ち上げのプロジェクトに携わるとともに、教育・研修等の企画、推進を10年あまり手がける。その後、株式会社ライトマネジメントジャパン(現マンパワーグループ株式会社)に入社。人事制度の構築といったハード的な側面のコンサルテーションに加えて年代別のキャリアデザイン研修や配置転換・職種転換後のチェンジマネジメント研修、評価者研修といったソフト面の施策企画や実施にも幅広く携わる。近年ではミスマッチ人材に対する意識改革トレーニングや活性化のためのスキーム構築など未だ確立されていないテーマにも従事。現在は、大手から中小企業まで幅広いクライアントの人事制度関連のコンサルテーションを中心に評価者研修、アセスメント、キャリアマネジメントといった運用面も含めた支援を行う。クライアントニーズに合わせた研修コンテンツ作成には定評がある。実務に即した多岐にわたるテーマでセミナーも多数開催。社会保険労務士、AFP、FP技能検定2級、年金アドバイザー2級、 DCプランナー

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