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これからの人事に必要なコンサルティング力とは?

Suprieve Consulting(株) 執行役員 岡田幸士

■人事に求められるコンサルタントの役割

 これからの人事には,1人ひとりが経営陣・事業リーダーに対して組織・事業の成長に向けた価値提供を行いつつ,時に統制(ブレーキ)を利かせるといった,相反する動きが必要とされます。なぜなら環境変化や事業の複雑化に対応するためには,権限委譲を進めて自律分散型の組織運営を行うことが自ずと求められるからです。
 人事としては各事業の戦略や特性,文脈に沿って人・組織の力の最大化・最大活用を実現していくためのサポート・助言が第一義として求められますが,一方で,1つの企業体として求心力を維持し,シナジーを創出していくために,時にビジネスサイドが望まないような働きかけ・介入を行う役割も必要とされます。例えば,将来の経営陣候補者としてキーパーソンを事業横断で異動させたり,全社共通の評価制度・ルールを導入したりするケースは分かりやすい例といえるでしょう。
 このようなケースでは,本来人事が,HRビジネスパートナーとしての役割に基づき,経営陣,事業リーダー,CoE(Center of Excellence)との間に入って,全体最適と個別最適に折り合いをつけるような動きを取ることが望まれています。ただし,そうした折衝・調整の前提として,普段からいかに人事担当者が各事業の成長に対して価値ある提言を行い,課題解決に関して経営陣や事業リーダーと伴走しているかが問われます。つまり経営陣・事業リーダー・CoEから「真のパートナー」,換言すると社内の「人事コンサルタント」として認められているかが重要となります。
 しかし,実態としてはこうした立ち居振る舞いができるHRビジネスパートナーや人事パーソンは非常に限られている印象です。
 人事が「真のパートナー」「人事コンサルタント」として活躍できていない現実があるとすれば,その原因の1つには,これまでの人事業務の延長線上にはない力を求められていることがあります。それが「コンサルティング力」です。

■人事に必要な8つの「コンサルティング力」

 これまでの経験上,高いコンサルティング力を持つ人材は基本的な型を持っていることが分かってきました。コンサルティングプロセスは抽象化すると「インプット(情報を集める)」→「スループット(情報を加工する)」→「アウトプット(情報を渡す)」という流れとなります。優秀な人材はまずインプットの量・質の水準が高いことはもちろん,社内外の多様なリソースを最大活用して必要な情報を収集しています。そして得た情報から要点を見抜き,そこから価値のある情報(有益な示唆や仮説)へと効率的に変換していきます。さらにその変換後の情報を目的達成のために最適な形でアウトプットすることができます。こうした一連の流れに必要な力として当社が定義し,育成に活用しているのが以下の8つです。
@セルフマネジメント力
A学習能力
B対人関係能力
C情報収集・分析力
Dロジカルシンキング力
E発想力
Fアウトプット作成力
Gコミュニケーション力
 各企業において人事パーソンやHRビジネスパートナー1人ひとりの力を進化させていくうえで,上記のような型・観点を参考にしていただけるのではないでしょうか。

(月刊 人事マネジメント 2022年1月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
日本マクドナルドにて、人事戦略策定・制度設計・労政等を経験した後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社の組織・人事コンサルティング部門にてマネジャーを経験。コンサルタントとして「Top3%」の評価を受けるとともに、新卒・中途コンサルタントの研修講師やコーチなども務める。社会保険労務士の資格を保有。著書:『最強組織をつくる人事変革の教科書』日本能率協会(共著)。

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