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フリーランス人材をスムーズに活用する契約時のポイント

イーストフィールズ(株) 代表取締役 東野智晴

 人材獲得競争が過熱していく時代に,企業が専門性の高い人材の確保に向けて,柔軟な契約形態に対応するのは今後の人事として必須になると思います。常にアップデートされる労務関係の法改定や派遣法の知識を身につけて情報を整えて対処することが求められるでしょう。フリーコンサルタントを多く抱える弊社は,案件ごとにクライアントと契約を交わしています。フリーランスを活用する際に注意すべき点を以下にご紹介します。
 まず,業務委託と雇用契約(契約社員・派遣社員)の2種類のどちらを選択するかという論点があります。短期契約という意味では一緒ですが,現場での指示の仕方によっては使用従属性があるとみなされ,業務委託契約では不適切な場合もあるため,事前に整理しておく必要があります。

■業務委託の準委任契約で注意すべきポイント

⇒業務の範囲を詳細に記載し,精算の幅を設ける
 業務委託契約は,委任・準委任・請負の大きく3種類に分かれ,フリーランスとの契約は準委任が一般的です。準委任契約とは,特定業務の遂行を定めた契約のことで,特定業務の遂行を目的に締結されます。準委任契約の場合,業務内容や成果物に対して完成の義務は負いません。そのため,結果または成果物に不備があったとしても,修正や保証を求められないことになります。一方,成果物責任を負う請負契約という形態もありますが,フリーランスが個人で責任を負うにはリスクが大きいため,あまり好まれないのが実情です。
 契約時と成果物を提出する際にトラブルを避けるため,まずは責任範囲を明確にしておく必要があります。業務内容の範囲を可能な限り詳細に記載し,精算の幅を設けます。例えば契約時間外の労働発生時の未払いなどはよくあるトラブルですが,事前に詳細に記しておくことで回避できます。それらを記載しておくのが,秘密保持契約書と基本契約書(損害賠償など,責任の範囲が明記されていない場合があるので注意)と個別契約書(案件ごとの契約書,精算範囲設定)もしくは注文書(案件ごとの契約書,精算範囲設定と呼ばれる書類)です。

■契約社員および派遣契約で注意すべきポイント

⇒業務委託契約との違いを丁寧に説明する
 フリーランスを自社で直接契約する場合は契約社員となり,依頼する期間に合わせて数ヵ月単位で契約更新していく形になります。契約社員という雇用形態が難しい会社の場合は,派遣会社に間に入ってもらい,フリーランスが派遣会社と雇用契約もしくは派遣会社と自社で派遣契約を締結する形になります。いずれにしても,労働者として扱われるため,自社の現場で柔軟に指揮命令が可能になります。
 ただし,フリーランスの方は業務委託が一般的で,雇用契約との違いを認識されていない場合があるため,その違いをよく説明しておく必要があります。
 一番大きいのが,派遣契約は雇用保険,社会保険に必然的に加入することを,フリーランスで働くコンサルタントが認識していないケースです。確定申告後の最終的な収入額は変わらないのですが,業務委託と比べると月々の手取額が少なくなるため,トラブルになる可能性があります。
 また,雇用主である会社側のリスクとしては,準委任契約と異なり業務遂行に対する責任がなくなる点,そして,雇用契約ゆえに業務委託よりも契約解除のハードルが高くなる点です。フリーランスが期待したパフォーマンスを発揮できなかった場合の会社側のリスクが大きい契約になりますので,雇用契約では特に契約期間をできるだけ短期で刻むなどのリスク軽減策が重要になります。

(月刊 人事マネジメント 2022年9月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
2009年に大学院卒業後、東京海上日動火災保険(株)に入社し、IFRS対応プロジェクトに従事。2013年に(株)ベイカレント・コンサルティングに入社し、マーケティング・セールス領域の改善を中心に支援。データサイエンティストとして社内研修の講師も務めた。2018年10月にフリーランスのコンサルタントに企業の案件を紹介するイーストフィールズ(株)を設立。創業時は自身でフリーコンサルタントとして働き、2ヵ月で1,000万円を稼いだ実績もある。

>> イーストフィールズ(株)
  https://eastfields.co.jp/