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人財に「選ばれる企業」の条件

(株)エル・ティー・エス
 ビジネスマネジメント本部 人事部・組織人財開発グループ
 グループ長 舩木いくみ

 ジンザイの概念が「労働力」から「人材」へ,そして「人財」へと変遷をたどってきた今,ジンザイの重要度はさらに高まっています。また「人生100年時代をどう生きるか?」という,現代を生きる私たち個人が抱えるテーマも大きく変化しています。このような背景から,企業は一方的に個人を選ぶのではなく,企業も個人に選ばれる時代になりました。社会の変化に合わせ,企業のジンザイに対する考え方,支援の仕方にも変化が求められています。

■個人と企業は対等の関係に

 日本のジンザイ観は,戦後の復興,高度成長期,バブル期,バブル崩壊期,停滞期という時代と共に変化してきました。「社会」と「経済」の変化に合わせ「企業」と「個人」を取り巻く環境,そしてそれぞれの考え方も大きく変化しています。

●社会:安定的で単純,変化のスピードが穏やかな社会から,不安定で複雑,変化のスピードが急な社会へ
●経済:高度成長から,低成長(成熟・停滞)へ
●企業:固定的な資産(人材)から,流動的な資産(人財)へ
●個人:企業戦士・定年退職の時代から,Work Life Integration・セカンドキャリアの時代へ

 知名度や給料の高い会社に入りそこで一生働き続けるという時代は終わり,個人の注目はその企業の「存在意義」,自分がその企業で「何ができるか」「何を得られるか」がより重要になってきています。やりたいことを求めて転職を繰り返したり,起業したりするのが当たり前となり,企業が一方的に個人を選ぶ関係性から,個人も企業を選ぶという両者対等な関係性になってきています。そのような状況でも,企業を永続・発展させていくためには人財確保が欠かせません。選ばれる企業になるためには,企業が個人との関係性をどのように構築していくかがポイントになります。企業と個人の強固なつながりを構築し,企業が選ばれ続けるようになるためには,以下の3点がポイントになると考えています。

■選ばれる企業3つのポイント

 1つ目は「企業のミッション・ビジョンの共有」です。自分たちは何を大切にしているのか? 自分たちは何者なのか? 自分たちはこの先どこに向かうのか? こうした自己認識は,企業が前に進むために欠かせない原動力になります。また企業の方向性を示すことで,個人は自己実現の場として企業を選択することが可能になります。個人が描いている未来と企業の未来がリンクした時に,企業と個人の関係性がより強固なものとなるのです。
 2つ目は「企業と個人の共通価値の明確化」です。多様性や個人のやりたいことは大事ですが,個人だけを重視すると企業としての力は発揮できません。企業(組織)は1人では成し遂げられないことを実現するために人々が集まった共同体です。多様な人々がお互いに差異を認め,相互に尊重し合ったうえで,共通価値で結ばれ,さらに企業と個人がお互いに磨き合い,高め合う関係が理想的です。
 そして3つ目は「ライフキャリア開発支援」です。企業に在籍している期間だけではなく,人生全体を対象とします。多くの人は仕事を持ち,仕事を通じて,他者(社会・お客様・仲間等)にとって意味のある存在を目指し,その過程で人間として成長していきます。企業での仕事に閉じず,別のコミュニティ,その後の人生でも活躍できるような経験を積んでもらい,個人の幸福度の高い,よりよい人生に貢献する支援を目指します。個人の思考や学びを広げ・深める機会を提供するとともに,様々な選択肢を提供し,自己実現を支援する状態が理想的です。

(月刊 人事マネジメント 2022年10月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
大学卒業後、エル・ティー・エスに新卒入社。コンサルティング部門を経て、人事職にキャリアチェンジ。若手社員を中心とした自社内の人財育成から人事のキャリアをスタートし、キャリアコンサルタントとしても活動。現在は組織開発・人財開発を推進するグループのリーダーを担当。自社のウェルビーイング活動、20周年の節目を迎えてさらに飛躍するための周年事業、新しい働き方を実現するためのオフィス移転等、全社横断プロジェクトを複数推進している。

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