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強い組織を支えるHRBPの役割

(株)リヴトラスト HR戦略部 課長 川上鉱介

 個を成長させ,強い組織を作るには「心理的ブレーキを外すこと」が重要です。ここでいう心理的ブレーキを外すとは「できない・やれない理由の撤廃」です。理想を掲げ,共有を図りたいと思ったときに,受け入れてくれる環境を作っていく必要があります。
 そのためにはまず社員一人ひとりが仕事をどう捉えているのか,人物把握ができる面談やツールを使い,その人の価値観を把握するところから始めます。この取り組みは,社員の考え方に会社が「合わせる」ものではありません。一人ひとりの価値観を把握したうえで,今後の育成計画や投げかける言葉,雰囲気の演出の参考にするために実施します。
 続けて,個の尊重を前提に,「一人ひとりが今より活躍するために何が必要なのか」をみんなで考える機会を数回設けます。こうした場では様々な案が出ますが,その案は外部的要因なのか内部的要因なのか,コントロールできるものなのか,できないものなのか,それぞれ整理して精査していきます。その後,代表の社員が経営層に意見を伝える場を設けます。経営層は,このような社員の姿勢や行動を受け入れる前提で臨むのがベストだと考えます。
 このように社員一人ひとりの個性や能力などの強みを存分に活かし,社員が働きやすい環境を用意することが「成果の最大化」につながります。

■組織の一体感を醸成していくには

 組織の一体感の実現では「トップメッセージの真の理解」がカギになります。そもそも,トップメッセージを大切にして仕事をしている社員がどれだけいるでしょうか。目の前の言葉を文字として認識しているだけの状態では,人それぞれの解釈になり,真に伝えたかったことや捉え方のニュアンスが変わってしまうリスクが生じます。この少しのズレが,数ヵ月すると非常に大きなズレにもなりかねません。大きなズレを起こさないためには,現場のマネジメント層とトップとの頻繁な(例えば週に2〜3回の)ミーティングが有効です。
 また,営業部門などで組織が細かく分かれているような場合,メンバークラスまで同じ理解を浸透させることは非常に難しくなります。そのようなときは,月に1度,営業部全体に対してトップメッセージの理解促進の場や現状確認の場を設けるといいでしょう。当社の例では,ディスカッションする場合,あえて現場の責任者は参加しないようにしています。これは単純に意見を言いやすい場を演出するためです。理解が弱かったことなどを声に出し仲間とディスカッションすることで,モヤモヤが解消され,理解促進につながる効果があります。万一,捉え方が弱かったり,理解が違ったりする場合には,全体に対し修正をかけることも必要です。この作業だけでもかなりの時間はかかりますが,確実に実施していけば組織は着実に前に進み,正しい一体感が醸成されていきます。

■実質的にHRBP職の役割が求められる

 これらの体制を実現していくには,経営層と部門長,そして社員を橋渡しする人材,HRBP(Human Resource Business Partner)職のような動きが必要になってきます。トップの思考を理解し,部門長のマネジメントと,現場のリアルな声を一本化するために仕事をする人材は組織に必要不可欠です。
 新たにHRBP職を設けたり,育てたりしなくても,教育担当者や採用担当者に適任がいれば,業務領域を広げてもらうことで補えます。その役割は,部門間の横断が常であり,課題に対して修正する動きもスピードが求められます。相当なハードワークになりますが,個の成長,強い組織そして企業の発展には欠かせない仕事,欠かせない人材といえます。

(月刊 人事マネジメント 2023年12月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
トヨタ系の自動車会社に新卒入社。6年間個人・法人営業を経験後、人材開発部にて採用・教育業務に10年間従事。HRBP業務の経験を求め、総合不動産企業へ転職。現在はHR戦略部にて社員育成等を通じて、組織に貢献中。

>> (株)リヴトラスト
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