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書評 2011.03

苦手なタイプを攻略するソーシャルスタイル仕事術

 本書には「ソーシャルスタイル」と呼ばれる人材タイプ分析の手法が紹介されている。16の簡単な設問から導かれる点数を「思考表現(横軸)×感情表現(縦軸)」のマトリクスにプロットすることで,4象限それぞれの人材タイプが判定される仕組みだ。そのタイプとは,@ドライバー(信長タイプ),Aアナリティカル(光秀タイプ),Bエミアブル(家康タイプ),Cエクスプレッシブ(秀吉タイプ)の4つ。ソーシャルスタイルとは,言動のクセのようなもので,外部からの観察によってより明確になる。“二者択一的に即決する”“精緻なデータを揃えて慎重に検討する”“みんなの意見をよく聞いて判断する”といった仕事の進め方,時間の使い方,意思決定やリスクの捉え方などに特徴が出るとされる。そこで,相手のタイプを見抜いて対応を変えれば,より効果的なコミュニケーションが成り立つとの提案である。プレゼンやクレーム対応場面での対人スキルの向上,また,リーダーとメンバーの組み合わせといったチーム組成などにも応用できそうだ。

●著者:室伏順子  ●発行:クロスメディア・パブリッシング/2011年1月11日
●体裁:四六版/240頁  ●定価:1,380円(税別)

忙しい忙しいと言うわりに成果の出ないあなたのためのタイミング仕事術

 本書は,素早く仕事をこなすためのノウハウ本などでは全くない。著者の説く「タイミングの管理」とは,単にTODOリストを潰していくタイムマネジメントとは質が異なる。それは,表層的な業務処理行為ではなく,“やる効果・やらないリスク”を考え,自らタイミングを作り込んでいく戦略的な取り組みといえる。すなわち,コントロールすべき「タイミング」とは,偶然に得られる「チャンス(ラッキー・運命)」ではなく,日々変化する状況のなかで,行動の意味や目的を常に考え,主体的にハンドリングすべきものとされる。その前提として,自分の価値観を明らかにし,中長期的に実現するビジョンを打ち立て,今年の目標を定め,今月やることに落とし込み,そして,今日のこの時間にやるべきベストの行動を問うという,ある意味で非常に厳しいマネジメント手法となっている。本気度全開の著者のメッセージは熱く,日々の忙しさにかまけて漫然と時を重ねてきた読者にとっては,人生を変えるほどのインパクトに満ちた天啓の書となるかもしれない。

●著者:坂本敦子  ●発行:日本経済新聞出版社/2011年1月25日
●体裁:四六版/189頁  ●定価:1,300円(税別)

仕事がない!

 2008年秋のリーマンショッックを契機とする激しい雇用調整のありさまは,年末の派遣村や大手企業の早期退職募集などで大きな話題になった。しかし現実には“ニュースにもならない小規模のリストラ事案”が以前から継続して増え続けていたことが著者の取材で判明している。本書は,20代〜50代の年齢別に失職の事情をヒアリングし,計36人のナマの声を紹介する構成だ。いずれも,会社の経営状態がおかしくなり,(不本意ながら本人も了解し)あっさりと失職している。企業買収,廃業,取引先の破綻などで,意外なほど簡単に仕事はなくなる。そしてハローワークに通ってみると,再就職が容易ではない事態に改めて直面する。「若い頃はこんな会社辞めてやると思ったが,辞めてみるとただの失業者だった」との50代求職者のつぶやきは象徴的だ。各氏とも再就職には絶望的で,失業保険あるいはパート仕事を掛け持ちしながら,日々の体裁を保ち,食いつないでいる。そして,ルポが追っているのはここまで。その後の姿は想像するほど深刻な気分になる。

●著者:増田明利  ●発行:平凡社/2011年2月10日
●体裁:四六版/208頁  ●定価:1,200円(税別)

知がめぐり,人がつながる場のデザイン

 著者らは飲食を伴う交流会とセミナーをセットにした“Learning Bar”をこれまで30回ほど開催してきた。「大人のための学び場」と位置づけるこのイベントには実はたくさんの仕掛けがあり,本書にその内幕が公開されている。通常の講演は「聞く→帰る」という単線的な流れだが,Learning Barでは「@聞く→A考える→B対話する→C気づく」というドラマチックな効果を見込む(さらに,DBarを出て語る→E自分もBarを作る,という発展まで期待されている)。自らをラーニング・プロデューサーと名乗り,学びの場を研究対象とする著者の計算は,実際,精緻だ。そもそもテーマ設定,講師の選択が仕掛けであり,当日のプログラムでも,レクチャーの合間に交流会の時間を挟むなど構成を練っている。また,飲食のメニュー,BGMの選択,さらには音量まで,最良の学習効果を引き出すための演出が施されている。学習理論として興味深いだけでなく,具体的な裏方の動きも面白く紹介され,企業内研修の設計などでも新しい試みを触発されそうな内容だ。

●著者:中原 淳  ●発行:英治出版/2011年2月14日
●体裁:四六版/253頁  ●定価:1,600円(税別)

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki