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書評 2011.04

売れっ娘ホステスの育て方

 「成果=みんなの能力×みんなの意思」これが“お店”を成功させるコツだ。個々のホステスにはオンリーワンの人材価値があり,お客さんの支持がある限り,小さな店でも潰れない。そんな売れっ娘の育て方を整理したのが本書だ。ホステスの適性条件は「人が好きなこと・人付き合いが上手なこと」。採用後は「会話や身だしなみのルール」といった初歩的なことを教えつつ,2ヵ月程度でプロ意識を持てるよう段階を踏んで育成していく。使用者(ママ)は,いい仕事を褒め,悩みを聞いてあげ,ときに注意したり保護したりして,個々の人材が元気に働ける環境作りに注力する。なぜなら,元気でやりがいを実感し,自信を持っているホステスほど輝き,お店の雰囲気も良くなり,お客さんも惹き付けられるからだ。一方,年齢を引け目に思うなど自信を失うと輝きは薄れ,お店全体にも活気がなくなるという。教育ノウハウというより,「接客の心構え10ヵ条」「会話上手の3要素」など,ちょっと知りたかった世界を見学するつもりで読みたい。

●著者:難波義行  ●発行:こう書房/2011年2月10日
●体裁:四六版/260頁  ●定価:1,600円(税別)

サービス残業という地雷

 弁護士・社労士の立場から数々の紛争事案を手がけてきた著者らは「経営の無知・誤解によって地雷がばらまかれている」と残業代未払い問題の危機を指摘する。従業員(退職者)が過去2年分の未払い残業代を会社に請求してくるリスクはあらゆる会社で発生しうると述べ,直近の実例紹介とともに企業側の予防策を綴っている。実際,経営側に悪意がなくても労働実態と残業代算出方法に錯誤があればアウトになる。とりわけトラブルになりやすいのが「年俸制」「みなし労働時間」「管理職」だ。さらに,算定根拠に含める手当の区別,深夜・休日割増し(2010年4月改正),「断続的業務」についての知識不足も狙われやすいとされる。未然防止策では,短期と長期のアプローチを挙げ,前者では労働時間・休日の確認を中心とする就業規則の整備を,後者では仕事量,効率化,良好なコミュニケーションの構築といった体質改善を,それぞれアドバイスしている。リスクのありかを知り,より正確な知識を身につけるための導入ガイドとして参考になる。

●著者:伊藤勝彦/小國佳代  ●発行:幻冬舎/2011年2月28日
●体裁:新書版/164頁  ●定価:740円(税別)

「ワーク=ライフ」の時代

 権利ばかり主張して働かない“仮面弱者”への疑問から仕事観を追究していく論の運びが大胆で面白い。「ワーク・ライフ・バランス」が語られる今日,なぜかライフばかりがクローズアップされ,“思うようにバリバリ働きたい人”が疎外されているのではないかと著者は危惧を示す。労働時間法制でいえばエグゼンプション推進の最右翼の立場であり,競争力の維持・拡大に挑む勤労者に対して「ノー残業デー」がいかに愚かな施策であるかを語っている。もちろん,ライフを優先させる価値観も容認しているが,ワークが縮小するのであれば,報酬も比例して減少し,社内のポジションも主流を外れる覚悟をすべきだと正論を譲らない。そして,この問題は突き詰めると「働くこと」の意味を問う作業になるとし,ヘーゲルやトルストイも俎上に乗せ,その解を「食べる手段」を越えて「生きることそのもの」に見つけている。さらには「最大の報酬は充足感」とも述べ,“毎日101%の働き方”を励行する。ハードワーカーには何とも力強い援軍の登場だ。

●著者:中川美紀  ●発行:KKベストセラーズ/2011年3月20日
●体裁:新書版/192頁  ●定価:743円(税別)

ビジネスで活かす電通「鬼十則」

 電通マンの行動規範『鬼十則』は様々なビジネス書に紹介されており,やさしい表現ゆえに読む者は“なるほどいい教訓だ”と簡単に納得してしまう。しかし,それがいかに浅い理解であったか,本書に教えられることになるだろう。著者は電通在職の23年間,十則を身を以て実践してきたビジネスマンだ。入社以来,十則に従い様々な仕事を成し遂げてきたが,それはときに失敗を重ねながら十則の理解を深める歴史でもあったようだ。例えば「主体的」という概念は「売れる・売れた」という客観事象ではなく,「売る・売った」という行動基準で表現すると具体的に腑に落ちる。「先手で働き掛ける」も,先制攻撃という意味ではなく,「先手」とは先の展開を想像し選択肢を複数用意し,「働き掛ける」とは決して暴力的に敵地に斬り込むようなことではなかった。いずれも著者独自の解釈との断り書きはあるものの“そういうことか!”と改めて目からウロコの落ちる内容に満ちている。群を抜く創造力の背後にある“何か”が見えてきそうな深く濃い1冊だ。

●著者:柴田明彦  ●発行:朝日新聞出版/2011年3月30日
●体裁:新書版/213頁  ●定価:700円(税別)

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki