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若手社員に「裏目標」を持たせよう

(株)キャリッジウェイ・コンサルティング 今井 孝

■人材育成が大変な時代でも有効策はある

 「若手社員を育てよう」という余裕が,どの会社でも減っているかもしれません。もちろん,以前よりも人が冷たくなったわけではありません。以下のような企業の置かれている状況に大きな原因があると思われます。
□仕事の分業・専門化が進んで,ビジネスの全体像を教える機会が減っている
□より短期間での成果が求められていて,人を育てる時間がない
 こうした状況で,若手社員の成長を早めるためには,どうすればいいでしょうか? その1つに,本人に「裏目標」を持たせるという方法があります。ここでいう「裏目標」とは,チームや部署の営業目標や開発目標とは別の,本人だけの「成長目標」です。例えば,若手社員が「資料づくり」という仕事を任されたとき,「資料を完成させること」は当然のゴールです。普通はそこにしか意識がありません。しかし,そのプロセスにおいて,
□「先輩をなるべく巻き込む」
□「既存の仕事のやり方の改善点を探す」
□「資料づくりに関する手順を整理する」
 などといったチャレンジを追加すると,当事者意識がより強く芽生えます。これを「裏目標」として設定してもらうわけです。

■小さな「裏目標」でも日々のやりがいに効く

 若手社員の成長を促す「裏目標」は,例えば図表に挙げたように,取り組みやすい簡単なものがいいでしょう。

 こうしたチャレンジの結果は,公式の成果数値には直接表れなくとも,若手社員のコミュニケーション能力の向上や,仕事のスピードアップといった面で確実に効いてきます。
 「裏目標」があることで,若手社員本人にとって,次のようなメリットが生まれるのです。
□成長の方向が明確になる
□毎日のやりがいが感じられる
□自分の仕事に客観的な視点が持てる
 簡単な「裏目標」なら,毎日の仕事にいくらでも設定できるでしょう。習慣化すると,仕事を引き受けるたびにゲームを楽しむようにチャレンジを考えるようになります。そして,裏目標が達成できたかどうかは(早ければその日のうちにでも)すぐに分かりますので,常にモチベーションを高く保てます。

■「裏目標」の設定を義務にはしない

 ただ,この「裏目標」の設定をルールや義務のようにしては逆効果です。本人の自由意思に従って,設定を促すのがおすすめです。厳密に実施するものではなく,非公式の機会にでも軽く提案してみるのが無難だと思います。また「裏目標」ですから,達成できたか問い詰めたりせず,好ましい成果があったら褒めてあげればいいのです。一度面白さを味わった若手社員が自ら「裏目標」を設定するようになり,日に日に成長していくことはよくあります。

(月刊 人事マネジメント 2016年6月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
1973年大阪生まれ。大阪大学大学院卒業。大手IT企業に約8年在籍し、新規事業を成功させる。独立後に始めたセミナーには9年連続で毎回300人以上が参加。トータルでは5,000人以上になる。また、マーケティングに関するさまざまな教材が累計3,000本以上購入されるなど、3万人以上の起業家にノウハウや考え方を伝え、最初の一歩を導いた。誰にでも分かりやすく、行動しやすいノウハウと伝え方で、「今井さんの話を聞いたら安心する」「自分でも成功できるんだと思える」「勇気が湧いてくる」と、たくさんの起業家に支持されている。しかし、自身は起業当初はセミナーを開催しても閑古鳥が鳴き叫ぶことばかり。数百万円を投資して制作した商品はほとんど売れず、部屋を占領する在庫の山に。ネット広告につぎ込んだ資金は一瞬で消えてしまい、胃の痛みと闘いながらの「起業1年目」は散々なものだった。どん底から脱するきっかけは、他人に貢献するためにビジネスを楽しむことだった。そのことを、さまざまな切り口から伝え続けている。

>> 株式会社キャリッジウェイ・コンサルティング
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